2013年ベストセラーランキング第一位
菊池寛賞受賞 書籍のご紹介をします。
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ガンは死の直前まで意識がはっきりしている
ガンの末期でも、家で安らかに逝けることが少しずつ知られて、「家で死にたい」
という患者さんや「家で死なせたい」という家族が増えてきています。
ある80代の患者さんは、頭頸部のガンにかかって放射線治療をしました。
しかし再発したので「もうこれ以上は、治療しないほうがいい」と家に帰しました。
家では、近所の開業医の往診を受けていましたが、家族の話では、
死の1時間前まで意識がしっかりしていて、眠るような最期だったと言います。
ガンは、亡くなる直前まで頭がはっきりしていることが多いんです。
痛みについて言えば、僕の経験では、胃ガン、肝臓ガン、食道ガン、子宮ガンの
四つは、放置すれば年齢に関係なく、最後まで痛みません。ほかのガンや、
治療の結果の痛みが出たとしても、苦痛を抑える「緩和ケア」に詳しい
医者を見つけることで、在宅でも痛みは100%コントロールできます。
安らかに逝く方法家で看取る場合、注意しなければならないのは点滴です。
毎日、針を差し替えるのは痛いし、医者の側からも面倒なので、たいていは
体のどこかの静脈に管を留めて四六時中、点滴をすることになります。
するとどうしても点滴の量がオーバーして、体が水ぶくれしてむくんでしまう。
そのむくみが肺に及ぶと、肺は水びたしになりますから、プールでおぼれたときのように
呼吸はハアハアゼイゼイし、セキやタンも出て、それはもう大変な苦しみです。
結論から言うと、
点滴をしないで、枯れ木のようになって死んでいくのがいちばんラクなんです。
何とか栄養を撮らせたいという想いも手伝って、やはり点滴をしてしまい、
患者さんを「溺死」させることになる。
実は医療産業の中で「在宅医療」は成長分野として注目されています。
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つまり経済的な目的があるので、「点滴の管をつけたまま家に帰そう」
という企てが生まれている。
また「どうせ点滴をするなら、何か薬も入れてみたい」というのが医者の性で、
抗ガン剤も加わることがあり、患者さんはさらに苦しむことになります。
せっかく家で安らかに逝かせようと連れ帰るのですから、病院での点滴過剰による
苦しみは、病院に置いてきた方がいいですね。
家でラクに死にたい、死なせたいと思うなら、持続点滴とは別れを告げる必要があります。
医療では、患者さんのためを思って作り出した方法が、問題の種になることがよくあります。
鼻から食道、胃に至る管で栄養を流し込む「鼻腔チューブ」、お腹に穴をあけて
胃に直接チューブを差し込み、養分や水分を送りこむ「胃ろう」もそうです。
こういう、強制的に栄養を与える方法がなかった時代は、
人は事故や脳卒中でこん睡状態におちいったら、それで一巻の終わりでした。
無理やり口に食べものや飲みものを流しこむと、肺のほうに入って肺炎で亡くなる。
栄養を与えなければ餓死が待っている。
植物状態で何年も生き続けることはありませんでした。
在宅医療なら、現代医療のおせっかいを受けずに、自然に死ぬことができます。
安らかに逝くとは「自然に死ねる」ということだと、僕は考えています。
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引用文献
第60回菊池寛賞受賞者
2013年ベストセラーランキング第一位
医者に殺されない47の心得
医療と遠ざけて、元気に、長生きする方法
著者 近藤 誠