2013年ベストセラーランキング第一位
菊池寛賞受賞 書籍のご紹介をします。
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放置していたら胃ガンが消えた
2010年に胃ガンで亡くなった日本人は男女合わせて5万人を超えました。
全ガン死亡者中、男女とも2位という多さです。
胃ガンの悲劇は、治療といえば手術になって胃を切り取られ、
患者さんの体が大ダメージをこうむることです。
胃を全摘されたり、胃の出口、幽門を含めて大きく切り取られと、
患者さんは「食べたものを消化する」「食べたものをためて少しずつ
十二指腸のほうにおくりだす」という、二つの大きな胃の機能を失います。
するとたべものがストンと小腸へ落下して、腹痛や冷や汗などの
「ダンピング現象」に苦しむ。それを避けるために、食事を1日4~5回に
分けて少しずつ摂ることになり、やせ細って元気をなくしてしまいます。
QOL(生活の質)がガクンと下がった上、寿命を縮めます。
そのほかに、傷あとが開いてしまう縫合不全や出血、炎症など、
手術が招く合併症や重い後遺症のリスクもあります。
僕の外来を訪れたAさんは「担当医に「早期胃ガンが見つかった。
胃の3分2を手術で切らないと、2年から5年ぐらいで苦しんで死ぬことになる」
と言われ、セカンドオピニオンを求めた病院でも、同じことを言われたそうです。
彼は僕に相談した結果、切らないという選択をしたら、
1年後の検査でガンは消えていました。検査から5年以上、ずっと元気です。
僕は、そもそも胃ガンの手術で胃を全摘したり、
大きく切除したりすること自体が誤りだと考えています。
ほかの臓器に転移している「本物のガン」ならば、胃を全摘しても治りません。
痛い思い、不便でつらい思いをしてやつれるだけ損です。
そして、他臓器へ転移しない「ガンもどき」なら、Aさんのように
治療しないで様子を見るだけでよいことが多いし、内視鏡治療など、
最小限のごく小さな手術ですむ可能性も高いからです。
臓器は温存すべき日本の胃ガン手術の大きな問題は、胃の周囲のリンパ節を
切除するリンパ節郭清(ごっそり切除すること)が当たり前とされていることです。
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胃の周りには、胃に近いほうから1~4群の数多くのリンパ節があります。
進行胃ガンの場合、胃の切除とともに2群リンパ節まで郭清する
「D2胃切除」を行なうのが一般的です。
これは患者さんに大変な後遺症をもたらします。胃袋に加え
腹部内臓に分布する自律神経も切除されるのですから。
すぐ下痢する、食べられる量が減った、すぐお腹が張って苦しくなる、胸やけ、
食べものがつかえる、食後に気持ち悪くなったり眠くなったりする、体重が戻らない・・・。
それでも何かメリットがあるならいいのですが、すでにイギリスとオランダの臨床試験で
「D2胃切除は生存率の向上に寄与しない」という結果が出ています。
ガンの手術は世界的な傾向として、可能な限り、臓器を温存する方向に向かっています。
いたずらに拡大手術に走っても、患者さんを苦しませるだけで、
生存率を上げる効果はないからです。
Aさんのような「無治療のまま様子を見る」という選択は、
究極の臓器温存療法と言えるのかもしれません。
引用文献
第60回菊池寛賞受賞者
2013年ベストセラーランキング第一位
医者に殺されない47の心得
医療と遠ざけて、元気に、長生きする方法
著者 近藤 誠
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